発酵たまご「ハッコーはる」をご愛用くださっている皆様に、先づ最初にお礼申し上げます。
名もない主婦が創りだした、この世にまだ例のなかった発酵たまごを、確たる証明もない頃より、理屈抜きで味と体感でチョイスしてくださった皆様のお陰をもちまして現在に至ります。発酵たまごの誕生は、元をたどれば一人の母としてのごく個人的な動機に端を発しています。この誕生物語が、ご関心をお持ちいただきこのホームページをご覧いただいている皆様が、発酵たまごについて知っていただく一助になれば幸いです。

物語のはじまり

全ての始まり

「そおや、いつか日本へ帰り、いつの日にか息子が自分の店を持ったとき、食事を終えられたお客様に一口お茶と共にお出しできる 美味しいぬか漬けが漬かるぬか床を残してあげることにしよう。
私のオリジナルで。」

誰一人知る人もなく、言葉に馴染みもないスペイン・マドリードへ渡った息子。
渡西から3度目の春を迎えようとしていたある日のことです。

発酵たまご「ハッコーはる」の誕生物語は、
"息子のためにぬか床を作ろう"と思いついたことから始まりました。

現在息子は現地で独立し日本食レストランを営んでいます。
〈Restaurante Japonés TxaTei 茶亭 http://txatei.com/ja/

「塩ゼロのぬか床を作ろう」

誰からも種を貰わない、塩を減らす

私のオリジナルを残してあげたいと思い、自分自身に条件を課しました。

「誰からも種を貰わない」「塩を減らす」

塩はとても大切なものです。しかし摂り過ぎは難。
つい食べ過ぎてしまうご飯の友は控えようとの考えで、私自身ずっとぬか床は持ちませんでした。

しかし飲食業に就いている息子のためにぬか床を作ろうと思い至ったとき
塩を減らし、尚且美味しく漬かるものにしようと考えました。


ぬか床に対しての先入観が全く無かったことが、却って功を奏したのかもしれません。試行錯誤を重ねて徐々に塩を減らし、挙句は〈塩分ゼロ〉が実現できた一因はそこにあるように思います。

「ぬか床は生きている!」

ぬか床には色々な変化が見られました。

あるときは、これぞぬか漬けといったなんとも言えない香しさが満ち満ちました。
またあるときは、溢れんばかりに活性して膨れ上がり熱を持ち、かき混ぜる腕にも力が入ります。
次にはまるで疲れを出しているかのようにあぶくを出す。
そしてだんだんに静かに冷たくなっていき、やがて固くなる…

「これは一体どういうことだろう」

それら全てが、気候の変化のなせる技であることに気付いたのはずっと後のことです。
しかしそれは同時に、「ぬか床は生きている!」 ということを実感した瞬間でもありました。

誰かが見ていたら、無理矢理にでも中断させられたであろうことの数々。
苦しみながら…

産んだ以上は育てなければ。
私にしかお世話できない。
途中で投げ出すわけにはいかないと心に固く誓いました。

試行錯誤

ついに塩をゼロに。

様々な食材を手当たり次第に漬けました。
まだこの時は、漬かるぬか床になっているのかどうかもわからないまま…

漬け込むたびに驚くような発見の数々。

かぼちゃは手で簡単に割れるほど柔らかくなり、中は新鮮そのもの。
長芋は灰汁が抜け粘りが増し、殻付きの生胡桃は醤油に漬け込んだような珍味に。
水茄子はますます甘くみずみずしく、渋柿は渋みが抜けてあっさりとした甘さに。

後から振り返れば、この時すでに〈塩分ゼロ〉のぬか床は完成していたのです。

卵のぬか漬け

あるとき、一人の友人に「卵のぬか漬けって聞いたことがないけれど、やってみたらどお?」
と言われました。

「そおやなあ、やってみようか。」

この偶然の会話が発酵たまご誕生のきっかけでした。

買ってきた卵を1パックどっぷり漬け込みました。
がしかし、漬けたものの何をどうしたら良いかわからず
とりあえずひと月後にひとつ取り出して割ってみると
何と新鮮そのもの、傷むことなくまったく普通だったのです。
これには驚きました。

たまごかけご飯にしたところ、これが美味しくて美味しくて…
試しにインスタントラーメンに入れてみると、油っぽさがなくなり、とてもアッサリ。
「もしかしたら、油の質が変わるのかしら」と思い、市販のドレッシングに溶き混ぜてみたところ
油っぽさが半減。あっさりとした品の良いドレッシングに生まれ変わりました。

たまごを食べてくれた友人たちから届いたのは、体調に起きる様々な変化の報せ。

「これは普通のたまごではない」そう確信しました。

「もっと知りたい」

このたまごを皆さんに知っていただきたいという思いが湧き上がってきました。

60歳を前に始めることに、失敗は許されない。
じっくり取り組まなければ、と肝に銘じました。

長い歴史上、なかったであろう塩ゼロのぬか床。
そこから生まれる発酵たまご。

それらを、何の知識も肩書もない自分が編み出したという不思議…

日本の食卓がすっかり欧米化してしまった、と言われてもうどれくらいになるでしょうか。
今やさまざまな料理や食材があふれています。
その中を生きる私たちの体はもしかしたら内なる悲鳴をあげているかもしれません。
けれども、一旦得てしまった「美味しい!」という経験を捨て去ることはなかなか出来ることではありません。
が、たった一つのたまごが日常の食事を舌にも体にも優しく変えてくれる。
血も血管も骨も肌も若返らせてくれる。

いつの日からか我が子と同然に育んできたハッコーはるが、
こんなに大きな力を持っていたとは想像だにしませんでした。

すべてをまろやかに
角のとれた優しい味に
不調を整え穏やかに
自己主張せずしっかり働く

まるで人としての在り方を教えてくれているように思えてなりません。

森恵以子